一週間も経たずして、鞍馬の神修での生活はガラリと変わった。


「今日はどこが休講やて?」

「五、六限目以外は全部だとよ」


登校して一番に確認するのは休講の連絡だ。河太郎先生が黒板に書いてくれているのを確認して、休講になった科目の課題を職員室に受け取りに行く。

突然休講になることもしばしばあって、その場合は完全に自習時間になる。真面目に教室で自習する時もあるけれど監督役の先生がいる訳でもないので、ほとんどは寮の広間で初等部の子供たちの面倒を見ながら過ごしていた。

ほな行こか、と下ろしたばかりの学生鞄を担いで立ち上がった信乃くんにみんなが続いた。


「支庁は今かなり大騒ぎになっているらしい」

「幽世のあちこちで問題発生しとるからな」


支庁、日本神社支庁はその名の通り日本神社本庁に属する機関のひとつだ。幽世で起きた問題のほとんどは支庁に集められ幽世にいる神職が対応する。


「本庁は社の敷地内にあるけど、支庁は場所を分けてるんだね」


来光くんの呟きに「確かに」と頷いた。

本庁はまねきの社の敷地内に庁舎を構えているのに対し、支庁の庁舎は幽世にある。


「幽世で起きた問題に対応するための機関やから、庁舎が現世にあるんじゃ不便やろ。それにこっちは本庁派がほぼおらんから、監視目的で庁舎を隣に立てる必要もあらへんし」