泣きじゃくるその子を励ますように皆が声をかけた。

「大丈夫だよ」「きっとみんな無事だよ」「すぐに終わるよ」

けれどやはり皆の瞳は不安と動揺で揺れている。その言葉は自分たちに言い聞かせているようにも聞き取れた。

赤狐族と黒狐族の開戦、立て続けに始まった羅刹族と頼豪鼠族の戦。漂う不穏な空気に、いつかその火種が自分たちの里へ飛んでくるかもしれないという恐れが少なからずあるんだろう。


「大丈夫や、御祭神さまが見守ってくれとる。いいようにしてくれはる」


不安がる子供たちに信乃くんがそう笑いかけた。

しかし、その日を境に幽世各所で妖一族同士の戦が開戦、激化の一途を辿った。