休講になったクラスは私たちの他にもあったらしい。学生寮の玄関でちらほら他学年の人達とすれ違う。
テレビゲーム大会でも始まっていそうだな、なんて呑気なことを考えながら広間へ足を踏み入れると、皆は広間の真ん中くらいで固まって座っていた。
テレビゲームではなくボードゲームでもしているんだろうかとも思ったけれど、賑わう声どころか話し声すら聞こえず、むしろ誰かがすすり泣く声に困惑した。
そっとその輪に歩み寄ると、すみにいた来光くんが私達二人に気付いた。
「二人ともおかえり。巫寿ちゃんやっぱり具合悪かったんだって? 大丈夫だった?」
恵衣くんの心遣いで私が戻らない理由は体調不良になっていたらしい。心の中で感謝を伝える。
「少し休んだらすぐに良くなったよ、ありがとう」
「よかった。でも具合が悪い時にこんな奴と二人きりなんて、僕だったら余計に悪化しそうだけど────痛ッ」
来光くんの背中を蹴飛ばした恵衣くん鼻を鳴らしてその場に座る。始まりそうな喧嘩を宥めながら「何かあったの?」と小声で問いかける。
広間に集まっていたのは私たち二年だけではなく初等部や中等部の学生もいる。皆どこか表情は暗い。
皆の真ん中に座っているのは信乃くんだ。私も何度か放課後に遊び相手をしたことのある初等部一年の男の子を抱きかかえている。
抱かれたその子は信乃くんの胸に顔を埋め泣いているようだった。



