「でしたら先輩も」

「ああ。本庁からの要請で空亡討伐に参加した。俺、祓除には向いてないから教師目指したんだけどなぁ」


はは、と苦笑いを浮かべた先生。


「そうだったんですね……ご無事で何よりです。俺はその頃中3だったから学生派遣の対象にはならなくて、実家からも危ないから帰ってくるなって言われてずっと寮にいたんです。最近の鞍馬の神修はあの時と同じ匂いがするんです」

「確かに、いい雰囲気ではないよな。さっき聞いた羅刹(らせつ)族の────」


二人が角を曲がってそれ以上の会話は聞こえなかった。行くぞ、と恵衣くんが歩き出し慌てて足を動かす。


"あの時と同じ匂いがするんです"

先生の言葉が頭の中で何度も繰り返された。