「そもそも休講になったからって勉強しなくていいわけじゃない。あいつらは空いた時間を自学自習に当てようとは思わないのか」
「そういう風に考えられるのは恵衣くんだけだと思うよ」
「呆れた奴らだな」
そんな雑談をしながら広間を目指して廊下を歩いていると、向かいから若い先生が二人歩いてきた。授業中に出歩いている私たちを見てすぐに呼び止められる。
一般科目を担当しているこの二人は、鞍馬の神修では珍しく人の神職さまだ。休講になったことを伝えると、他のクラスは授業中だからあまり出歩かず自習するんだよ、と釘を刺されて「はぁい」と肩を竦めた。
先生たちが遠ざかっていく。私たちも行こうか、と背を向けたその時。
「それにしてもこの感じ、嫌でも思い出すな」
「ですね。あれから十三年前か……」
そんな話し声が聞こえて私と恵衣くんは顔を見合わせる。
嫌でも思い出す?
「俺、当時は神修の中等部三年だったんですよ。そん時も今みたいな感じでじわじわ休講が増えてって」
「俺も空亡戦の頃は鞍馬に異動する前で、向こうの神修にいたから覚えてるよ」
「え、先輩って神修で教鞭取ってたんですか?」
「ああ。担当は高等部だったから見かけなかったんだろ」
二人の会話に上がった「空亡戦」という言葉に歩みが止まる。恵衣くんも会話が気になっているらしく、足を止めて振り返った。



