とっくに授業が始まっていると思っていたので静かに教室の後ろ扉を開けたけれど、中はガランとしていて誰もいない。

教室の掛け時計を見上げる。授業が始まって20分は経過している。


「次って現国だったよね?」


隣に立っていた恵衣くんに尋ねる。丁度スマホをいじっているところだった。何かを確認した恵衣くんはスマホの画面をくるりと引っくり返し私に見せる。

トークアプリの画面、送り主は来光くんだ。

【次の現国 休講になった】

そんなメッセージが届いている。


「休講?」


スマホを確認すると『チーム罰則』のグループトーク画面にも皆から同じ内容が届いていた。休講になったので寮の広間で雑談しているらしい。


「みんな広間にいるんだって」

「ん」


教室に背を向けて歩き出した恵衣くん。足先はどうやら広間に向いているらしい。

少し前までなら絶対に私たちの輪に混じろうとしなかったのに大きな変化だ。相変わらず来光くんとは直ぐに喧嘩になるけれど、教室で会話している姿は増えた気がする。


なんだか嬉しくて頬が緩む。恵衣くんは隣に並んだ私を怪訝な顔で見下ろた。