だって神々廻芽と話した事については今初めて恵衣くんに伝えた。私はその会話からあの考察を導き出したわけで、それを知らない恵衣くんがたどり着けるはずがない。

だったらどうして?


「お前一つ忘れてるぞ。まだあっただろう、一年の三学期にも」


一年の三学期?

一年の三学期と言えばまなびの社での神社実習だ。来光くんの昔の友達が蠱毒を作り学校中の人たちを呪った事件を私たちが解決した。

他に何か────ハッと息を飲んだ。


「ノブくんに蠱毒のやり方を教えた人物……!」


そんな大事なこと忘れてたのかよ、とでも言いたげな呆れためで息を吐く。

別に忘れていた訳じゃない。ただあの時は昇階位試験のことで頭がいっぱいだっただけだ。


「それだけじゃないだろ。まなびの社に侵入しようとした女の妖がいた」

「た、確かにいた……!」


ぽんと手を打つと恵衣くんがより一層私を睨む。

だから本当に忘れてた訳じゃなくて、試験のことで頭がいっぱいで!


「あの時、あの女妖怪がお前に言った言葉が引っかかっていたんだ。だから薫先生に伝えておいた」


必死に記憶を遡り何を話したかを思い出す。

一年の三学期、まなびの社。神社実習の最終日で、丁度恵衣くんと一緒にいた時だった。黄土色のウェーブがかった髪に、鮮血のような赤い瞳の妖。