「その神々廻芽が何なんだ」


少し怖い顔をした恵衣くんに言葉につまる。ゆっくりと口を開いた。


「高校生の頃、薫先生たちを裏切って空亡側についたの。いま空亡の残穢を利用して、何かを企んでる」

「それとお前と何が関係ある」

「神々廻芽が、私を狙ってるかもしれないの」


恐る恐る恵衣くんを伺う。続けろ、と目で促されて、私の考えを伝えてみた。

一学期と二学期に起こったこと、神々廻芽がそれに関わっていること、彼らが何を話したか。それらを繋げると、もしかしたら彼の狙いは私にあるのではないかということ。

目を細め黙って聞いていた恵衣は私が話終えるなり「なるほどな」と呟く。何かが腑に落ちたらしい。


「だから、薫先生に相談すべきかどうか悩んでて。でもまだこれは憶測段階だったし……」

「だったら相談する必要はない」

「そうだよね、やっぱり相談すべき────え?」


恵衣くんなら「馬鹿かお前? 今すぐ神職に相談しろ」と言うと思っていたので、予想外の返事にぽかんと口を開ける。


「神々廻芽かどうかはさておき、お前が狙われているかもしれない可能性については俺から薫先生に伝えてある」


一瞬何を言っているのか分からなくて沈黙が流れる。そして「え、え? 伝えたの?」と拍子抜けした声で聞き返した。