小さく息を吐いた。恵衣くんは私が話し始めるのを黙って待っている。


「あの……神々廻芽って人を知ってる?」

「誰だよそれ」


神々廻芽が神修に現れた時、恵衣くんは私たちと一緒にいなかったから知らなくても無理はない。


「神々廻って、薫先生の親戚か」


恵衣くんは眉根を寄せた。


「薫先生の双子の兄弟なんだって」

「……双子?」


仏頂面が驚愕の表情に変わる。

この界隈にいる人物なら双子がどういう存在なのかはよく知っているからだ。

言霊の力は呪と言祝ぎの二つの要素が合わさって成り立っており、言霊の力は遺伝するものではないけれど言霊の力を持つもの同士から生まれた子供は高確率で力を宿す。

しかし生まれる子供が双子の場合、言霊の力は生まれたその瞬間呪と言祝ぎに分離する。一人目の子が言祝ぎのみを、二人目の子供が呪のみをもって産まれてくるのだとか。

薫先生は双子の弟、薫先生も例に漏れず生まれた瞬間にその体に呪のみを宿して生まれてきたらしい。


呪のみを宿した身体、つまり生きているうちは常に呪われた状態であり発する言葉は呪いに転じる。

今でこそ飄々とした態度で私たちの担任をしているけれど、幼少期はきっと私たちが想像できないほどたくさんの苦労をしてきたはずだ。