私の直階一級の件は、解決したようで解決していない。(くゆる)先生と恵衣くんの協力のおかげで、本庁の役員がなぜ私に直階一級に合格させたのかは判明したけれど、その後本庁から何か連絡があったわけではない。

恵衣くん曰く私は次の審神者候補者の一人に上がっているようだけれど、現状、二代前の審神者である(ほまれ)さまと私を引き合わせて、先見(せんけん)の明の使い方を学ぶように促されただけだ。

薫先生は「選ばれた側にも断る権利はある」と言っていたけれど、またあの薄暗い会議室に呼び出されて気難しそうなおじさん達に囲まれて「審神者になれ」と詰められたら、断る勇気より気の弱さが勝ってしまいそうな気がする。

そして夏休みにほだかの社で聞いた薫先生のあの発言。

『ここまで色々起きてるんだよ、あの鉄壁の結界が守る神修の中で。そりゃもう疑うしかないでしょ────裏切り者』

考えたくはないけれど、事実がそろっている以上否定はできない。

この世界に来て知り合った人たちを思い出す。神職さまや先生たち、先輩にクラスメイト。みんないい人たちばかりだ。その中に私達を裏切って仲間の命を危険に晒した人がいる、そう思うとゾッとした。

黒い眼帯が脳裏を過る。薫先生のお兄さんであり元は神修の学生。家族や友人を裏切り空亡に寝返った男、神々廻(ししべ)(めぐむ)。私は何度も彼に接触した。