「どへッ」
「ぐはぁッ」
「はい、今回も俺の勝ちやな。泰紀はダッツのクッキーアンドクリームで、来光はストロベリーな。ほなよろしく」
曇り空に潰れたカエルのような二人の悲鳴が響き渡る。
屋外演習場の白砂の上に重なって潰れる泰紀くんと来光くんの背中に、とどめを刺す勢いで腰を下ろしたのは、それはそれは楽しそうに笑みを浮かべる信乃くんだ。
今日で何度目かの組討演習の授業。最近は神修勢も勝率が上がってきているので、少し前から勝った方がアイスを奢るというルールができた。
このところ泰紀くんは三分の二くらいの確率で誰かにアイスを奢っている。私は根本的な力の差を考慮してもらってほぼ見学なので参加していない。
慶賀くんの手を借りて二人は悔しそうに立ち上がる。
「なんでよりによってハーゲンダッツなんだよ!」
「そうだよ! 昨日までガリガリ君とかだったじゃん!」
「金額の上限は指定されてへんしぃ」
しれっと答えた信乃くんに二人はぐぬぬと言葉を詰まらせる。やり取りを聞いていた飛扇先生は「賭けるなら先生の聞いていない所でやりなさい」と苦笑い顔で三人の頭に手刀を落とした。
飛扇先生の講評が始まって、耳を傾けながら何となく遠くの空を眺める。このところ、雨は降っていないのに真っ白な絵の具にほんの少しの黒を混ぜたような重く暗い色の空が続いていて何だか息苦し。
二年生になってから色々な事が起きた。それによって生じた私の身の回りの問題は何一つ解決しないまま山積みになっており、余計に気が重かった。



