暗闇で顔はよく見えないけれど、迷うことなく参道を進み本殿を目指して歩いてくる。

一人はかなり背が高くもう一人は華奢な体格に見えた。


「────よく……ることを許したな」

「────……てないよ。だからこうして突撃するんじゃん」


風に乗って話し声が聞こえてくる。男性と女性の声だ。二人は白衣に色付き袴を身に付けていた。


「でもまさか嬉々(きき)が乗ってくるとは思わなかったけど」


はっきりと聞こえた声には聞き覚えがあった。偶然聞いてしまった単語に目を丸くする。本殿の前で立ち止まっていると、参道を歩いてくる二人組が少し離れたところで足を止めた。


「あれ、巫寿?」


驚いたように名前が呼ばれる。昼間吊るしたばかりの提灯がその人の顔を照らした。


(くゆる)先生? 嬉々先生も…」


思わぬ来訪者に目を丸くした。

神々廻(ししべ)(くゆる)先生、私が通う神役修詞高等学校(しんえきしゅうしこうとうがっこう)の教員であり一年からの担任だ。その隣に立つのは玉富(たまとみ)嬉々(きき)先生、同じく神修の教員で呪法関連の科目を担当している。

不揃いの前髪から細められた目が私を見る。ドキッとして一瞬息が止まる。一年の時から嬉々先生の授業を受けているけれど、冷たいこの目にはいつまでも慣れない。


「久しぶりだね、巫寿。夏休み楽しんでる?」

「あ…はい」

「ここにいるって事は巫女助勤のバイト?」