「滋伊ちゃんはこう言ってるけど、巫寿どうする?」


スマホのロック画面で時間を確認する。もう少しで部活が始まる時間だ。今から急いで戻れば後半からなら参加できるだろう。

素早く聖仁さんに「遅れて参加します」とメッセージを送って立ち上がった。


「ありがとう。でも後半からなら部活に間に合いそうだから、私は戻るね」

「そっか。なら俺も帰ろっかな。明日も学校だし」


滋伊さんは少し残念そうな顔をしたけれど、すぐさま「では持ち帰れるように重箱に詰めてきます。十分ほどお待ちくださいませ」といそいそ自宅の方へ戻って行った。

重箱って、どれだけ詰めるつもりなんだろう。ありがたいけど食べきれるだろうか。

慶賀くんが私の向かいに座った。


「急に連れ回してごめんな、巫寿」


改めて深々と頭を下げた慶賀くんに慌てて両手を振る。


「本当に気にしないで。私の方こそ役に立てなくてごめんね」

「ごめん、ありがとう」

「それにしても慶賀くんに妹さんがいたなんてびっくりした。てっきり一人っ子なんだと思ってた」


曖昧に笑った慶賀くんは頬をかいて目をそらす。


「あんま賀子の話して、みんなに心配かけたくないからさ」


そっか、と目を細める。

思えば私もお兄ちゃんが入院していることは皆に話したりしなかった。経学んと同じように余計な心配をかけたくないという気持ちがあったからだ。