「慶賀坊ちゃんが貴女さまをお連れした時は驚きましたが、そうですか。あなたが巫寿さまだったのですね。お話は伺っております。チーム罰則の一員なんだと」
まさかこんな場所でその不名誉なチーム名が出されるとは思っておらずゴボッとむせる。
慶賀くんは一体おうちの人達にどういう説明の仕方をしているんだろう。
「ですがどうして巫寿さまが祝詞の奏上を……? 慶賀坊ちゃんはなぜ巫寿さまに頼んだのでしょうか」
「あ……多分私の言祝ぎが多いからだと思います。前に私の作った祝詞で強い呪いを祓除できたので、もしかしたらって思ったんじゃないでしょうか」
賀子ちゃんにかけられた呪いは、八瀬童子の里で私が祓った呪いよりも格段に強いものなのだろう。
これまで見た呪いは被呪者の身体にまとわりつくようなものだったのに対し、賀子ちゃんの呪いは身体に染み込むようなものだった。
呪いについては勉強し始めたばかりだけれど、そんな症例のある呪いは聞いたことがない。
きっと慶賀くんは藁にもすがる思いで私に「助けてくれ」と頼み込んだんだろう。
「……巫寿」
名前が呼ばれて振り返る。
目元を赤くした慶賀くんが立っていた。
「ごめん、部活の時間もう間に合わねぇよな」
力なく笑った慶賀くんに首を振る。
「そんなこと気にしないで。賀子ちゃんの具合は……?」
「……ん、今は落ち着いてる」
そっか、と頷く。どう言葉をかければいいのか分からず視線をつま先に落とした。



