神職さまにはそれだけで十分に伝わったらしく、悲痛な面持ちで項垂れるように一つうなずいた。


「賀子お嬢さまが5歳の頃、何らかの呪いに触れ、それきり眠ったままの状態です。今年の七月頃から容態がかなり悪化して……」


やっぱりそうだったのか。

最初、賀子ちゃんを見た時ただ眠っているだけのように見えた。けれど祝詞を奏上した瞬間、強いイメージを受け取った。

紫暗の靄が彼女の身体の中を血液のように流れ、骨や筋肉に染み込んでいくイメージだった。間違いなくあれは呪いか残穢のどちらかだろう。

5歳の頃から寝たきりということは、約五年間賀子ちゃんはあの状態ということか。


「年の離れた妹君でしたので、慶賀坊ちゃんは賀子お嬢さまのことを大層可愛がっていらっしゃいました。ですので、賀子お嬢さまが伏せられてからは酷く落ち込まれたご様子で」

「そう、だったんですね。慶賀くん学校ではいつも明るくて元気だったから、そんな事情があったなんて気付きも────」


そこまで言いかけて、思い返せば慶賀くんの様子がおかしかった期間があったことを思い出す。

あれは一学期、奉納祭の少し前。(くゆる)先生が特訓と称し私たちを任務に連れ出した時だった。帰りに旅館に泊まって、みんなが騒ぐなか一番はしゃぎそうな慶賀くんが誰よりも大人しかった。

それが丁度7月ごろだったはずだ。

思い返せばふとした時になにか思い詰めたような顔をしているのを何度か見かけたこともあった。てっきり奉納祭の作戦を考え込んでいるのかと思っていたけれど、もしかしたら賀子ちゃんの体調を案じていたのかもしれない。