一時間後、沈黙に包まれる室内で女の子の容態を確認した神職さまが力なく首を振る。室内にいた人たちは酷く肩を落とし、慶賀くんは変わらず泣きそうな顔で女の子の手を握っていた。

わけも分からずただ必死に頼み込まれ、私は女の子に例の祝詞を奏上した。けれど彼女の容態は変わらず今も深い眠りについたままだ。


「……巫寿さま」


女の子の容態を確認していた老年の神職さまが私の名前を呼ぶ。こちらへ、と促され慶賀くんを残し部屋を出た。

案内されたのは社務所だった。忙しそうに働く神職さまたちが「この少女は誰だろう?」と不思議そうに視線を向けてくる。程なくして湯のみとお茶菓子を持った先程の神職さまが戻ってきた。私の前にそれを並べると向かい側に腰を下ろす。


「慶賀坊ちゃんから、賀子お嬢さまの事はお伺いしていなかったのですね」

「あ、はい……えっと慶賀くんの妹さん、なんですよね」

「はい。賀子さまとおっしゃいます。慶賀坊ちゃんとは七つ年の離れた妹君で、今年十歳になられます」


布団に横たわる賀子ちゃんを思い出す。十歳の女の子にしてはかなり小柄で線が細い。


「賀子ちゃんは、」


その先を言葉にするには失礼になるのではないかと思い言葉を止める。