ハッと我に返った慶賀くんは勢いよく振り返ると縋るように私を見上げた。
「頼む巫寿、あの祝詞を奏上してくれッ……! 巫寿なら言祝ぎも多いし、もしかしたら賀子にも効果があるかもしれないだろッ……!?」
畳を転がるように這った慶賀くんは私の両手首を掴んだ。
「ちょ、ちょっと待って慶賀くん」
「頼むよ、何でもする、俺に出来ることなら何でもするからッ……!」
取り乱した慶賀くんの瞳から堪えきれなくなった涙がぽろぽろとこぼれ落ちる。部屋の中にいた人達が困惑した表情で私を見ている。
「と、とにかく落ち着いて……」
「助けてくれ、賀子を助けてくれ! 可能性があるのは巫寿だけなんだよ!」
「慶賀くんッ……」
賀子は、と叫んだ慶賀くんが歯を食いしばって私を見上げた。
隙間から布団に横たわる女の子の顔が見えた。頬は痩けてまるで生気を感じないほど白い肌、けれどどこかやんちゃそうな面持ちはお兄さんによく似ている。
「────賀子を、俺の妹を助けてくれッ」



