病室の外に出ると廊下の隅で慶賀くんはまだ誰かと連絡を取りあっているようだった。
会話を聞かないように少し離れたところで待つ。
部活のことや宿題のこと、今日の夕飯のことをぼんやり考えていると、こちらに向かって歩いてくる足音が聞こえる。
振り向くと慶賀くんが背後に立っていた。
「慶賀くん、電話終わっ────どうしたの?」
思わず目を見開いてそう尋ねた。先程とは打って変わって、青白い顔をして俯く姿に驚く。
ギュッと握りしめられた拳が小刻みに震えている。噛み締められた唇は白く、瞳は不安に揺れている。
「大丈夫? 何かあった?」
「巫寿……」
うん?と首を捻る。
次の瞬間、慶賀くんがパッと顔を上げて私の肩を掴んだ。あまりにも切羽詰まった表情によりいっそう困惑する。
「頼む巫寿、助けてくれ……」
今にも泣き出しそうな震える声は確かにそう言った。



