言祝ぎの子 陸 ー国立神役修詞高等学校ー




「────なるほど、巫寿さんは巫女職希望でしたか」


神職さまたちの祝詞奏上の練習に付き合ったあとは、療養所で呪いの祓除を手伝う事になった。

禰宜と療養所へ向かう道中で進路について尋ねられた。


「八瀬童子の社も毎年巫女職を募集していますので、ご興味があればぜひ。なんなら私から宮司に口添えしますよ」

「あはは……ありがとうございます」

「先の戦いから、人の子の幽世での就職率は低下の一途を辿っていますからね。何かと物騒になりましたし」


そうなんだ、と深く頷く。思い返せば空亡戦の話は色々と聞いてきたけれど、現世でどんな被害があったかばかりだった。


「幽世ではどんな被害が……?」


そう訪ねると禰宜は少し目を細めて俯いた。


「幽世では空亡側について他一族を制圧し、現世に領地を広げようとする妖が急増しました。幽世のあちこちで大きな戦が起きていたんです」


空亡側につく、という言葉に(くゆる)先生のお兄さん(めぐむ)さんの顔が一瞬脳裏を過る。

裏切りがあったのは現世だけじゃなかったんだ。


神母坂(いげさか)禄輪(ろくりん)どのはご存知で?」


突然上がった禄輪さんの名前に驚きながらもひとつ頷く。


「禄輪どのは空亡戦の終結後、約十二年間幽世に滞在されていました。幽世と鬼脈の間にある鬼門の八割が空亡側についた妖たちによって破壊され、それを再建するためです」