「俺は筋トレでもしようかなぁ」
「俺は課題進めるよ。古典ちょっとやばいし」
「あ、嘉正。だったら僕も一緒にいい? 分かんないとこあるんだよね」
「俺と瓏は信田妻の里に戻るわ。赤狐族が今どんな感じなんか、親父から聞いときたいし」
次々と予定を決めて行くみんなに、私はどうしようと首を捻る。
そうだ、と手を打った。
「私は八瀬童子の里に行こうかな」
丁度療養所の先生から、私が作った祝詞について聞きたいことがあると連絡があったところだ。三時間もあれば問題なく行って戻ってこられるだろう。
「悪い巫寿。俺この後河太郎先生に日直の仕事頼まれてるから、違う日でもいいか」
鬼市くんが申し訳なさそうに手を合わせた。
「行き方は覚えたし一人でも大丈夫だよ?」
「また変なやつに声かけられたらどうするんだ。それに赤狐の里で開戦したなら鬼脈も騒がしいだろうし」
ちょっと心配しすぎな気もするけれど、確かに用心はした方がいいのかもしれない。
じゃあやっぱり鬼市くんが一緒に行ける時を待った方がいいのか、そう思って「分かった」口を開きかけたその時。
自分の席で静かに本を読んでいた恵衣くんが大きなため息をついて本を閉じた。顔を向けると目が合う。



