「まぁお前らには聞き馴染みないやろうけど、幽世じゃしょっちゅうある話や。領地拡大だの勢力誇示だの。妖は血の気が多いからな」
「戦の相手、黒狐族。昔から、戦好き」
「そうそう。こいつのこと攫った一族な」
ボブボブと頭を叩かれた瓏くんは少し迷惑そうにでもどこか嬉しそうな顔でその手を払い除ける。
「騒がしくなりそやな」と目を細めた信乃くんに、私も妙な胸騒ぎを感じて目を伏せる。
八瀬童子族の里で知り合った子供たちの顔が脳裏を過ぎる。戦のせいで親を失った子供たちだ。
またあんな子供たちが増えるんだろうか、と思うと胸が痛い。
窓の外はシトシトと嫌な雨が降り続いていた。
「とにかく午後は休みになったわけやし、寮の広間で茶でもしばくか」
「そうだな。俺らがここで論じたところでなんにも変わらないし」
「要請があれば、動くだけ」
そんな感じでいいのかぁ?と泰紀くんが頬をかく。
私も最初はそう思ったけれど、確かに鬼市くんたちの言う通りだ。私たちがここで色々案じたところで何かが変わる訳でもない。
今自分が出来ることをやるだけだ。
「みんな午後どうする?」
来光くんの問いかけにみんなは腕を組む。
部活が始まるまであと三時間はあるし、割となんでも出来そうだ。



