「午後の授業が、全部休講?」


昼休み、食堂でご飯を食べたあと外は雨が降っていたので教室で雑談していると、日直の仕事で職員室に呼ばれていた鬼市くんがそんな情報を持ち帰ってきた。

返却されたノートを配りながら鬼市くんが「ああ」と頷く。


「急だね。職員会議とか?」

「いや、俺たちのクラスだけだ。午後の授業って漢方薬学と呪法だろ。科目担当の先生、二人とも赤狐(せきこ)族だから」


途端、表情を険しくしたのは信乃くんと瓏だった。

赤狐族だから休講になるって、一体どういうこと?


「何だよ、仲良く揃って里帰りかぁ?」

「……ある意味そうやろな。里帰りつーより、緊急招集の方やろうけど」


緊急招集?とみんなが首を傾げる。

信乃くんは神妙な顔で続けた。


「先週頃から黒狐族と一悶着ありそうやってきな臭い噂は耳小耳に挟んどったんや。俺んとこの信田妻(しのだづま)族にも赤狐族から応援要請が来てたからな。おそらく、赤狐族の里で戦が始まったんやろ」


戦、という言葉があまりにも馴染みがなく皆は一瞬反応に遅れた。そして「い、戦ァ!?」と素っ頓狂な声を上げる。