なんと言葉をかけたらいいのか分からず俯くと、おばあちゃんは「暗い話はやめましょう!」と手を打った。


「巫寿ちゃんはどんなことに興味があるの? 学校ではどんなことを勉強してる? 好きな食べ物とか読んでる本とか────あ、恋人はいるのかしら?」


楽しそうにそう尋ねてきたおばあちゃんに、オレンジジュースが変なところに入ってゲホッとむせた。


「こ、恋人なんていません……!」

「あらそうなの? 巫寿ちゃん可愛いんだし、モテモテなんだと思ったのに。先輩に格好いい人はいないの?」

「格好いい先輩は沢山居ますけど……仲のいい先輩には可愛い彼女さんがいるので」


鶴吉さんや聖仁さんの顔を思い浮かべてそう答える。そうなの?と少し残念そうな表情で首を傾げたおばあちゃん。

おばあちゃんって意外とミーハーなのかもしれない。


「あ、だったらクラスメイトは? 確か一恍と泉寿が本庁でお世話になってた京極さんの所のご子息が、高校二年生だったはずよ」

「京極さん……あ、京極恵衣くんですか?」

「そうそう恵衣くん。小さい頃に両親とうずめの社へ参詣にきて、ご挨拶してくれたのよ。まだ初等部だったけれど、なかなかハンサムな顔立ちをしてたわよ」


恵衣くんの顔を思い浮かべる。確かに脳裏に浮かんだ顔は整ってはいるけれど、整った顔立ちがみるみる険しい顔になる。