次の休みに実家に持って帰れば、お兄ちゃんもきっと喜ぶはずだ。


「実はね」


おばあちゃんは少し楽しそうな顔をしてそう言うと、鞄の中から手帳を取りだした。

真ん中に挟んであった何かを取り出して私に差し出す。それも写真だった。

見覚えのあるそれに「あ」と小さく声を漏らす。


「これ……」

「二人とも結婚してからは一切連絡してくれなかったんだけれど、一度だけ一恍が手紙を送ってくれたの。入ってたのはこの写真だけだったんだけどね」


小学生くらいのお兄ちゃんがお母さんと手を繋いで、3歳くらいの私がお父さんに抱かれている写真だ。

見覚えがあるのはこの写真が、実家のリビングにも飾ってあるからだ。

裏を見てみて、そう促されてひっくり返すと裏面には達筆な字で「義母さんへ」と始まる短いメッセージが添えられていた。


────義母さんへ。元気ですか。俺たちは元気に過ごしているので、どうか心配しないでください。もう少し今の戦況が落ち着いたら、泉寿を説得して子供らと実家に顔を出したいと思います。写真に写ってる男の子が上の子で祝寿、名前は禄輪が考えました。俺が抱いてるのが巫寿、志ようが名付け親です。二人とも自分の命よりも大切で、俺たち二人の宝物です。一恍より


最後の署名でこれがお父さんの文字なのだと分かる。

そうなんだ。お父さんは空亡戦が落ち着いたら、実家との蟠りを解こうとしていたんだ。でもそれは叶わなかった。

じゃあおばあちゃんは、喧嘩別れがそのまま一生の別れになってしまったんだ。