色褪せたてはいるものの状態は十分に綺麗で、おばあちゃんが大切に保管していたことが伺える。
恐る恐る手に取った。背表紙にはやはり「一恍 泉寿」の文字がある。その下には西暦がある。計算してみるとそれはちょうどお母さん達が神修の学生だった時代だ。
「うちにあるアルバムは、二人が家を出て行った時に主人が全部燃やしちゃったの。辛うじてこれだけが残って、こっそり隠し持ってたのよ」
少し悲し気に笑ったおばあちゃん。
絶縁するほど怒っていたとはいえ、思い出まで燃やしてしまうなんて。
おばあちゃんはたった一つだけ残ったアルバムを大切に隠し持っていた。やっぱりおばあちゃんは、おじいちゃんや和来おじさんとは少し違うのかもしれない。
パラパラとページをめくる。今の私と同じ松葉色の制服を制服を着た両親が満面の笑みで映っていた。
「これ……本当にもらってもいいんですか?」
「ええ、もちろん。私はもう擦り切れるほど眺めたから」
「すごく、嬉しいです。ありがとうございます」
実を言うと、実家には両親の写真がほとんどない。あるのは両親の遺影と、幼い頃にお兄ちゃんが毎日付けていた日記帳に挟んであった数枚の家族写真だけだ。
家族で撮った写真を収めたアルバムやカメラは、前に住んでいた家から今の実家に移る時になくなってしまったとお兄ちゃんは言っていた。



