鞍馬の神修は京都の有名な観光地のすぐ側にある。そのおかげで店探しに時間を取られることもなく、すぐに小洒落たカフェに入ることができた。
オレンジジュースを頼んだ私に「あら、パフェはいいの? パンケーキは? いちごのケーキは?」とデザートを勧めるおばあちゃん。
最初は遠慮していたのだけれど結局押しに負けて、いちごとチョコのパンケーキを頼む。おばあちゃんは満足気に店員さんに注文を伝えた。
「そうそう、忘れる前にこれを渡しておかないと」
手を打ったおばあちゃんは足元の荷物カゴに入れていたもみじ柄の風呂敷を持ち上げるとコップを寄せてテーブルの上にそれを広げた。
「まずはこれね。泉寿が若い頃に着ていたお洋服なんだけど、ちょうど巫寿ちゃんの背丈に合うんじゃないかって思って」
広げられた小花柄のワンピースに目を丸くする。
「これ、お母さんが着ていたものなんですか?」
「ええ。でもあの子ったら"こんな服着てたら思いっきり走れないじゃない"って、二三回着ただけで箪笥の奥にしまい込んじゃって」
禄輪さん曰く「お転婆、じゃじゃ馬娘」なお母さん。ジーンズであの広い社頭を駆け回っている姿が簡単に想像できて思わず笑ってしまう。
ありがたくいただきます、と両手で受け取った。
「あと、一番大事なこれを」
そう言って一冊のアルバムをテーブルの真ん中に置いたおばあちゃん。



