禄輪さんの言葉に吹き出した神職さま達は、むしろ嬉しそうにカラカラと笑う。
「俺たちのことをそんな風に扱えるのはお前だけだよ」
「気心知れた仲とはいえ、他所の社の宮司に下働きみたいな事させやがって!」
コノヤロウ、と肩に手を回された禄輪さんの表情もいつもよりどこかリラックスしていて何だか幼い。
おそらくこの人たちとは友人なんだろう。
「で、このお嬢ちゃんはお前の隠し子か何かか? 仕事人間だったくせに、ヤる事ヤってたんだ────」
全部聞き終わる前に禄輪さんによって耳を塞がれた。剣幕な顔で禄輪さんが何か言っている。
「子供の前で馬鹿なこと言うんじゃないッ!」
やがて耳が開放された。禄輪さんが苦い顔で窘める。
巫寿、と名前を呼ばれて背中を押された。おそらく自己紹介をしろということだろう。
姿勢を正して頭を下げた。
「初めまして、椎名巫寿です。高校2年生です」
名乗った瞬間沈黙が訪れた。ぽかんと口を開き目をまん丸にした神職さまたちが私を凝視する。
なんだかすごく気まずい。
「椎名って……おい禄輪まさか」
禄輪さんが目を弓なりにして頷いた。私の肩を引き寄せてぽんと軽く叩く。
「ああ……泉寿と一恍の愛娘だよ」
神職さまの一人が、よろよろと私の前まで歩み寄った。震える手が私の両肩を掴む。
驚きで満ちた目がじっと私の顔をのぞきこんだ。
「年越の大祓に行った他の奴らから、話は聞いてたんだ。一恍の子供らに会ったって。ああ……そうか。この子があの二人の。そうか、そうか」