一度目の通し稽古が終わると10分休憩が挟まれた。私は盛福ちゃん瑞祥さんと雑談をしながら休憩をとる。


「ええッ、初デートに山梨でぶどう狩り!?」


話題は週末の話になった。

瑞祥さんは先週の休日に聖仁さんと山梨でぶどう狩りデートをしてきたらしい。

飯の後でお裾分け持ってくわ、と自慢げに鼻を鳴らす。


「山梨って……じゃあ一泊したんですか!?」

「ば、泊まるわけねぇだろッ! 日帰りだ日帰り!」

「だって山梨って、交通機関を使っても片道六時間くらいかかりますよね!? だったらどうやって一日で往復したんですか!」


たしかに京都から山梨となると、まず京都駅まで行ってそこから新幹線に乗り、おそらく途中で特急への乗り換えも必要だろう。

移動時間もそうだけれど、交通費もかなりかさむはずだ。


「鞍馬の神修は学生のために迎門の面を貸出してるんだよ。それ使ったおかげで往復二時間だ」


二本指を立ててヒヒヒと笑った瑞祥さん。


「あ、瑞祥さんも迎門の面借りたんですね。私もお借りして、八瀬童子の里に遊びに行ったんです」

「お、巫寿も有効活用してんだな! いいよなアレ。こっちの神修にも導入してくれればなぁ」


たしかになぁ、と頷く。

神修も学期末や長期休み明けは学生に迎門の面を配ってくれるけれど、私用で利用したい場合は実費だ。残念なことに学生がそう簡単に買えるような値段ではない。