「お疲れ様、皆見えてる?」


パイプ椅子の上に置かれたパソコンの画面を覗き込み、慣れない手つきで操作する聖仁さん。

画面の向こうにそう問いかけるとパッと画面が切り替わり、神修の稽古場と神楽部の部員たちの顔が映る。『お疲れ様です!』と元気な返事が返ってきた。


「お、映った映った!」


聖仁さんの肩越しに画面を覗いていた瑞祥さんが嬉しそうに声を上げた。おーい、と手を振った瑞祥さんに画面の向こうのみんなも「わぁー!」と手を振り返す。


『便利な世の中ねぇ。これは、もう私たちが向こうにも見えてるの?』


向こう側のパソコンを覗き込んだらしく、我慢いっぱいに富宇(ふう)先生の顔が写った。富宇センセー邪魔邪魔!と向こう側のみんなが騒ぐ。

そんなやり取りに私たちはくすくす笑った。


今日は神楽部の活動がある日。

二学期の終わりにある奉納祭(ほうのうさい)で演舞予定の八岐大蛇伝説(やまたのおろちでんせつ)の稽古が少し前から始まっているけれど、高等部の私たちは鞍馬の神修で異文化理解学習の最中だ。

11月いっぱいまでは神修に帰れず部員全員揃っての稽古ができないので、天叡さんの提案でパソコンのミーティングアプリを使ってリモート稽古が実施されることになった。