差し出された手に林檎を乗せたお兄さん。掌から転がり落ちて布団を転がる。戸惑うよに布団の上で手を滑らせるお母さんの肩を叩き、もう一度林檎を持たせた。

その僅かなやり取りに、彼のお母さんが負った呪いの重さを知る。


「鬼市くん……この人達は、なんの呪いを受けたの……?」

「分からない。一通りの解呪は試したけれど何一つ効果がなかったから、恐らく一から作り出されたものだろうな」


分からないままだなんて、悪くなる一方の不治の病と同じだ。



「だから緩和なんだ。一日三回神職が祓詞を奏上してである程度の痛みは取っているが、それでも"ある程度"だ」


呪われたことはないけれど、残穢を体に取り込んだ時の苦しさは知っている。

息ができず目が回り、身体中を内側から攻撃されているような痛みに襲われる。


この人達は、それが何年も続いているんだ。


「今日は鬼市が奏上してくれるん?」

「ん。あと彼女も」

「そら頼もしいわ。鬼市の日は母さんもいつもより調子ええんよ。────ほらガキ共、治療の時間やし出ていき!」


はーい、と渋々出口へ向かった子供たちは「また来るなぁ」と手を振って出て行った。