養生所は里の外れにある二階建ての建物だ。
軽い病気や怪我なら神職が診て漢方薬を処方するのが大半だけれど、八瀬童子の里のように人口の多い里にはこうした養生所が設けられているらしい。
鬼市くんの案内で中に入る。
一階で診療を請け負い、二階は入院患者の病床になっているらしい。木造建築で全体的に古びた印象はあるものの現世の病院の作りによく似ている。
鬼市くんは中央の階段を上って二階へ進む。用があるのはどうやら病床のほうみたいだ。
「ねぇ鬼市くん。もちろん私に出来る事なら手伝うけど、呪法の授業は2年生になってから習い始めたから、お役に立てるかどうか……」
「問題ない。頼みたいのはどっちかっていうと祓除よりも緩和だから」
「緩和?」
呪いの緩和ってどういう意味だろう?
ここ、と指さした病室はネームプレートが六枚下げられた六人部屋だった。何やら中から賑やかな声が聞こえてくる。引き戸をからから開くと同時に「お!」と聞きなれた声が中から聞こえた。
「鬼市と巫寿じゃん」
「里探検は終わったの?」
体のあちこちに里の子供たちをぶら下げた慶賀くん達が「よ!」と手を上げる。
「みんなもここにいたの?」
「ここにいたつーか、子供らに連れてこられたつーか」
ベッドの上で休む女性が「ごめんなぁ」と呟く。いえいえ全然、とにこやかに応えながら皆は子供たちの遊び相手をこなす。



