代わりに鬼市くんが申し訳なさそうな顔で「悪い」と謝る。何だか既視感のあるやり取りだ。
複雑な心境のまま小さく首を振ると、鬼市くんは眉を下げて息を吐いた。
「あの、鬼市さんはどちらへ?」
「俺は養生所の手伝いだ。巫寿が良ければ手伝ってもらいたくて探してたんだけど」
養生所、と言うと確かこの里の病院のような場所だったはず。
断る理由もないので「大丈夫だよ、手伝う」と答えようと口を開いたその時、鬼子ちゃんが私達の間に割って入った。
「私も行きます!」
「お前はこの後お頭に呼ばれてるんだろ」
「少しくらいなら大丈夫です!」
「駄目だ。わがまま言うな」
顔を真っ赤にした鬼子ちゃんはギュッと唇を噛み締めて何か言いたげに鬼市くんを見上げると、続けざまに鋭く私を睨んだ。
「お頭待ってるぞ」
「……はい。行ってまいります」
目を合わせないように小さく会釈した鬼子ちゃんは逃げるようにその場から立ち去った。



