「嫌な言い方? 自意識過剰なんじゃありません? お生憎様、私は生まれた時からこういう喋り方なんで」


鬼子ちゃんの顔が引き攣る。瞳の奥で激しい怒りが燃え盛る。


「そもそも、貴女が鬼市さんに関わらなければこんなことに……ッ!」


不自然に言葉を止めた鬼子ちゃんはふっと顔を背けると大股で歩き出す。

慌ててその背中を追いかけた。


「何を勘違いしているのか分からないけど、私と鬼市くんは何もないから!」

「適当な事言わないで! 貴女のせいで私たちの婚約は破綻になったんだから!」

「それは……ッ、鬼子ちゃんに他の一族から婚姻の申し込があったからなんでしょ?」

「それは違う! だって鬼市さんは私の夢を知っているもの!」


伸ばした手を勢いよく叩かれた。驚いて胸の前に抱き寄せる。

叩くつもりはなかったのか、鬼子ちゃんも一瞬驚いた顔をして直ぐに顔を顰める。


「貴女、何なの? 私が神託で次の宮司に選ばれる保証なんてない。私には鬼市さんと婚約するしかないの。お願いだから邪魔しないでよッ……!」


鬼子ちゃんの声が僅かに湿る。怒りに染った瞳がぐらりと揺らいだ。

その時。


「鬼子? 巫寿?」


二人同時に振り返ると、怪訝な顔をした鬼市くんがそこに立っている。


「き、鬼市さん……」

「鬼子、また巫寿に突っかかってんのか? あれほどやめろって言っただろ」

「別に私は……」


バツが悪そうに目を逸らした鬼子ちゃん。