「鬼子ちゃん今日は泊まってく〜?」
「うち鬼子ちゃんのお隣で寝たい!」
腰を下ろすとあっという間にまた子供たちに囲まれた鬼子ちゃん。普段からすごく慕われていることがよく分かる。
「鬼子も神修に入る前まではここの子供やったんや」
え、と目を見開いた。
鬼子ちゃんもここの子供って、つまり鬼子ちゃんの両親は。
私の顔を見て面倒くさそうに息を吐いた鬼子ちゃんは渋々口を開く。
「別に珍しいことでもないでしょう。私の親は空亡戦で亡くなりました。ここにいる子供たちの殆どが、不毛な戦で親を失っているんです」
空亡戦、という言葉に目を伏せる。
妖の中にも私のように先の戦で親を失った子供がいるんだ。
どうしたの?と丸い瞳が私の顔を不安げに覗き込む。ふっくらした頬をそっと撫でる。
この子もまだ五歳くらいだろうか。こんなに幼くして両親を亡くすなんて。
あれ、五歳……?
「先の戦は十数年前ですよね? この子達の両親が戦で亡くなったって言うのは……」
「妖の世界では領地争いや権力争いでしょっちゅう種族、一族間の争いが起きるんや。この里も三年前に天狗の一族の襲撃にあった。そん時にな」
だから鬼子ちゃんは不毛な戦と言ったのか。
妖は血の気が多い生き物だから昔から絶えず争いあってきた、と授業では習ったけれどその争いの傷跡を間近に触れて言葉が出てこない。



