私の後見人である神母坂禄輪さんは、ほだかの社で宮司として奉職している。
ほだかの社の歴史は長く、十三年前の空亡戦によって社が潰れるまでは、かなり権威のある地位にいたらしい。
今年の年末年始に巫女助勤として社を手伝った際はまだ建物のあちこちに工事中のシートがかけられていたけれど、再建が始まって一年半が経ちようやく本殿の修繕が終わった。
敷地が広いので立派なお社なのだとは何となく分かっていたけれど、初めて見た本殿のその荘厳さには圧倒されたものだ。
社紋が描かれた提灯を吊るしながら、本殿を見上げて息を吐いた。
「おーい、そこの巫女の姉ちゃん。出店許可書はどこに貼ったらいいんだ?」
ハッと我に返って脚立の上から下を見る。
黒いキャップを被った顔色の悪いおじさんが着崩した着物の前併せを窮屈そうに引っ張って私を見上げている。
「あ、はい! 説明します!」
よっと脚立を降りて、おじさんに駆け寄った。
「いやぁ、今年の夏はとりわけ暑くてたまんねぇな」
「毎日最高気温更新してますもんね」
青い、というか緑い顔を歪ませたおじさんが帽子を脱いだ。
「こんなんじゃ俺ら、干からびちまうよ」
干からびる、というのは彼らの中ではあながち冗談ではない。
キャップの下から出てきた少し黄ばんだお皿。小脇に挟んでいたペットボトルを躊躇うことなく頭の上でひっくり返す。