「初めまして。庇角院で子供らの保護者代わりをしとる、文鬼ていいます」

「初めまして。椎名巫寿です。高校二年生です」

「高校二年生ゆうと、鬼市と同い年か」

「はい。鬼市くんとはお友達です」


そうかそうか、と嬉しそうに何度も頷いた文鬼先生。

文鬼先生〜ッと子供達が背中に飛びついてくるのを動じることなく受け止める。いつの間にか私の膝の上も満員だ。


「あの、文鬼先生。この子たちは……? それにここって……」

「ここは親のおらん子供らが暮らしてる、まぁいわゆる孤児院ってやつやな」


孤児院、と繰り返し、膝の上に座る子供達を見下ろす。子供たちはどしたん?と純粋無垢な瞳で私を見つめ返し、ニカっと笑って見せた。


「先生なんて呼ばれとるけど、わしはただの隠居ジジイや。趣味で子供らの面倒見ながら、勉強教えとる」


なるほど、だから先生って呼ばれてるのか。


「ご自分のことそんなふうに言わないでください。文鬼先生は文鬼先生です」


そんな声とともにお茶を用意しに外していた鬼子ちゃんが戻ってきた。

カシャン、と私の前にプリンと紅茶を置いた。貴重なプリンなんだから百回は噛んで味わいなさいよ、と私を睨む。

プリンって噛んで食べるものだったっけ。