鬼市くんの案内で八瀬童子一族のお社へ着いた頃にはすっかり月は隠れ朝日が昇っていた。

客間でくつろいでいたみんなが、私たちの登場に驚く。


「巫寿! 大丈夫だったのか!?」

「不振な人物ってどういうことだよ!」


心配する皆に囲まれて、慌てて「大丈夫大丈夫!」と胸の前で手を振った。

あんなメッセージを送るから、と少しの恨みを込めて鬼市くんを見上げる。間違ったことは言ってない、とでも言いたげな顔で顔を背けた。


「て、あれ? 巫寿の兄ちゃん?」

「こんばんは。どうしたんですか?」


私の後ろに立っていたお兄ちゃんに気づいた皆が不思議そうに挨拶をする。皆とは学校行事で何度か顔を合わせたことがあるみたいで「おう、久しぶり」と片手を上げた。


「お兄ちゃんともうずめの社で会って……」

「そうだったんだな。あ、祝寿さんもマリパやります!?」


ちょうど皆でゲームをしていたらしく、慶賀くんがゲーム機を指した。お兄ちゃんは「悪い」と小さく手を合わせる。


「巫寿と大事な話があるんだ。また後でな」

「ちぇー、了解っす」


慶賀くんの頭をガシガシと撫でたお兄ちゃん。慶賀くんはどこか嬉しそうに肩を竦めた。