鬼脈まで戻ってくるとやっとお兄ちゃんが手を離した。ゆっくり振り返って私の顔を覗き込む。


「すぐに巫寿が連絡くれてよかったよ。びっくりさせてごめんな。巫寿は何も気にしなくていいから」


うずめの社に着いてすぐ、皆に連絡すると同時にお兄ちゃんにもうずめの社にいる事を連絡しておいた。お兄ちゃんはその連絡を見てすぐに私の事を迎えに来たらしい。

いつものように私の頭を軽く叩く。


「お兄ちゃんは知ってたの……?」

「椎名家が俺を探してるって事? まぁね。本庁に神修時代の同期がいて「叔父がお前の現住所を聞きに来た」って教えてくれたんだ。探してる理由までは知らなかったけど」

「それもそうだけど、そうじゃなくて」


私の曖昧な言い方にう「ん?」と首を捻る。


「お父さんとお母さんって、兄妹だったの……?」


は、とお兄ちゃんが息を飲む音が鮮明に聞こえた。迎門の面で隠れていて見えないけれど、激しく動揺しているのが分かる。


「兄妹だからおじいちゃんたちは結婚を反対したの……? だから無理やり押し切って結婚したの?」

「……誰かに聞いたのか?」

「……和来おじさんが言ってたの。でも全部を聞いたわけじゃない」


そっか、とお兄ちゃんは天を仰いで深く息を吐いた。何かを考え込むように黙り込んだ後、「場所を変えるか」と呟く。