「それでうずめの社は────親父は、椎名の血を引き継いでいて、倭舞を伝授できる男を探してるんや」


なるほどな、と心の中で呟く。

うずめの社の倭舞を受け継ぐ後継者がいない、あわよくばお兄ちゃんに受け継いでほしい。だから和来おじさんは私をここに連れてきんだ。

たとえ絶縁した娘の子供であろうと、とにかく椎名の血が流れていればそれでいいと思っているんだ。

なんて身勝手な、と怒りがふつふつ湧き上がってくる。

親子の縁を切って私たち家族を遠ざけていたのに、困った時にだけ急に現れて助けを乞うだなんて。

私は両親との記憶が薄いから、お父さんやお母さんが親戚を頼れずどんな苦労をしてきたのか分からない。でももし親戚の助けがあったなら、感じなかった孤独や不自由さはあったはずだ。

少なくともお兄ちゃんは、進学を諦めたりしなかっただろう。


「それはあまりにも、自分勝手じゃないですか」

「そう聞こえてもおかしないわな。君らも巻き込まれた側の人間やし」


その言い方にもやりとして、眉間にぎゅっと皺を寄せる。

和来おじさんの言い方じゃ椎名家も私達やお兄ちゃんも、お母さんたちのせいでこうなったとでも言うような言い方だ。

両親が結ばれたから私は今ここにいる。何よりも、少ない記憶の中にいる両親は目一杯私のことを愛してくれた。