「これ、お父さんとお母さんの事が書いてある」
「巫寿の?」
うん、と頷いて刻まれた跡を撫でた。
複雑な気持ちはさておき神聖な庭園のそり橋の手すりに相合傘を刻むなんて、昔の両親はなかなかヤンチャだったらしい。
お母さんが禄輪さんから「じゃじゃ馬」やら「お転婆娘」やらと呼ばれていたのも納得がいく。
二人の名前が記されているから、付き合ってから書いたんだろうか。それともお母さんがこっそりここに書いたんだろうか。
「……ここにおったんか」
二人して振り返ると、和来おじさんが橋の手前にたっていた。目が合ったので小さく会釈すると、和来おじさんは反応に困ったのか気まずそうに後頭部をかいて目を逸らした。
「急に連れてきてもうて堪忍。でもこの機会を逃したら、もう二度と会えんやろと思うて」
「だったとしても、初対面の女の子の手をいきなり掴むのはどうかと思うが」
「……ほんまに悪いと思てる」
「それにあの態度はなんだ? 平等を掲げる社が男尊女卑か?」
遠慮のない鬼市くんの言葉に和来おじさんはどんどん項垂れていく。
「その通りやな……」
深く頭を下げた和来おじさんに、そこまでされてまだ拗ねるほど子供でもない。もういいですから、と俯がちに答えると、おじさんは少し救われたような顔をして息を吐いた。



