言祝ぎの子 陸 ー国立神役修詞高等学校ー


「あ、あの。私の名前、椎名みこ────」

「君の事はええ。それより年の離れた兄がおるやろ。彼は今どうしてるんや」


自己紹介で間を繋ごうとしたけれどばっさりと切り捨てられた。隣にいた鬼市くんが殺気立ち、かなり失礼な態度を取られたんだと自覚する。けれど怒りよりも戸惑いの方が大きかった。


「兄は今、社会人です」

「名前は。神職じゃないんか。階級は。神修を卒業したんとちゃうんか」

「あ、えっと、椎名祝寿っていいます。中学からは普通の学校に進学して……たまに任務は引き受けてるみたいです。去年の冬に昇階位試験を受けて────」


それからお兄ちゃんの現在について色々と質問されて、私は淡々とそれに答えた。しばらくその時間が続き、やがて聞きたい事は全て聞けたのかおじいちゃんは「夕飯を食べて行くといい」とだけ言い残し和来さんをつれて部屋を出て行った。

部屋に残ったおばあちゃんと私達。また気まずい沈黙が訪れる。

出て行った二人の足音が完全に聞こえなくなって、ずっとうつむいていたおばあちゃんがゆっくりと顔を上げた。

お母さんが生きていたらこんな感じに年を重ねたんだろうなと思わせるよく似た面持ちだった。強張った表情からは緊張が感じられる。


「お名前……聞いてもいいかしら」