私たちを連れてきたあの男性の言うことが正しければ、ここはお母さんの実家というわけだ。まさかお母さんの実家が教科書にも乗っているほど有名なお社だったとは。
親戚とは疎遠と言えど、何も知らない自分が少し情けない。
「待たせたな」
す、と襖が開いて現れた壮年の男性。二重まぶたの大きな人懐っこい瞳が私たちを見下ろす。
表情は相変わらず冴えない、を通り越してどこか不機嫌さすら感じる。
「和来さん……」
椎名和来さん、血縁関係で言う私の叔父にあたる人だ。
私と鬼市くんを一瞥して中へ入ってきた和来さんの後ろから続けて二人誰かが入ってくる。年配の男性と女性だ。二人とも硬い表情で私を見る。
確認せずともその二人が私とどういう関係なのかは、顔を見て分かった。お母さんの面影を残す瞳と鼻、唇に纏う雰囲気。
私たちの前に腰を下ろした三人。真ん中に座ったおじいさんが深いため息をついて私と目を合わせた。
妙な緊張が走る。
「君が泉寿の娘か」
母のあの声は、父親譲りだったらしい。
「……はい。おじいちゃんと、おばあちゃんですよね」
「そうや」
この人たちを”おじいちゃん、おばあちゃん”と気安く呼ぶにはかなり違和感があった。
また気まずい沈黙が流れる。



