何より映像で見せてもらったお母さんが使っていた巫女鈴と似ているので、それを手にしていればお母さんのように上手く舞えるような気がする。
気がするだけで本当にまだまだなんだけど。
何となく巫女鈴の一つを手に取った。右手に構えてシャンと軽く鳴らしてみる。澄み透った音色は心地よく、うっとりと目を細める。その時。
「泉寿……!?」
突然背後から驚いたようなそんな声が聞こえて、え?と振り返った。
迎門の面でよく顔が見えないけれど、声の低さと身体付きでなんとなく壮年の男性なのだと分かった。浅黄色の袴を身に付けていて、神職なのだと分かる。パッと見た限り羽も獣耳もないので、おそらく人間の神職さまなのだろう。
男性は間違いなく私を見て「泉寿」と呼んだ。泉寿は、私の母の名前だ。
「えっと……」
困惑気味に首をかしげると、ハッと我に返るように男性の肩が揺れる。
「わ、悪いな。お嬢さんの雰囲気が知人に似ていて、驚いてしまって」
ああなるほど、と一つ頷く。
どうやら人違いだったらしい。
「もしかして母のお知合いですか? 私の母は椎名泉寿と言いまして」
禄輪さんや両親の事を知る人達いわく、私は若かりし頃のお母さんにそっくりなんだとか。もしかして若かりし頃の母の面影が重なったのかもしれない。そう思って何となく尋ねてみると、男性が分かりやすく息を飲んだ。



