江戸時代の宿場町を彷彿させるその場所は、昼夜問わず沢山の妖でにぎわっている。奥までずらりと古風な黒い木造建築がずらりと立ち並び、漬物屋、飴屋、薬屋に食事何処と沢山の店が軒を連ねる。街頭替りに吊るされた提灯のあかりが橙色に妖しく灯っていた。

いつ来てもここはお祭りのような賑わでわくわくする。禄輪さんの影に隠れて怯えながら歩いた一年前とは大違いだ。


一時間後に茶屋で待ち合わせすることに決めて一旦解散した私達。早速他の皆は買い物へ繰り出して行った。

私は特に欲しい物があるわけではないのだけれど、最近女子の間ではやっている雑貨屋を覗いてみることにした。そこの匂い袋が凄く可愛くて、袋の柄も香りもバリエーション豊富で皆休みの日になるとこぞって買いに出かけていた。

私も気になっていたので折角なら一つ買ってもいいかもしれない。

雑貨屋に足を踏み入れる。人気なようでお客さんはそれなりに多い。何人かは紫色の袴をはいた人もいて、人の姿に少しだけ安心する。香り袋のコーナーは人だかりができていたので、他の棚を見て待つことにした。

巫女鈴が飾られた棚を見上げる。

私も去年の夏頃から巫女舞の練習をする時は自前の巫女鈴を使っている。柄に梅の刺繍が施されたものだ。神具を取り扱う店で見かけて、かなりいい値段だったし欲しいとまでは思っていなかったのに気付いたらお兄ちゃんが購入しており満面の笑みで渡された。

あの頃はまだ進路を決めていなかったので無駄になるかもしれないと思いお兄ちゃんを責めたけど、巫女志望に進んだ今となってはありがたい。