長らくの沈黙、瑞祥さんの鼻をすする音だけが響く。瑞祥さんが恐る恐る顔を上げた瞬間、私たち三人の深いため息が揃った。
「マスター、強いお酒くださーい」
「甘酒ならまだ少しあるよ」
「恋する乙女って面倒ですね。BLならドキドキして読めるのに。あ、巫寿さん私にも下さい」
「なんだよお前ら! 私は真剣に悩んでるんだよッ!」
噛み付く瑞祥さんに私たちは顔を合わせてもう一度ため息をついた。
「いちいち言わなきゃ分かんないかなぁ……恋愛感情の有無はさておき、聖仁さんが瑞祥さんのこと嫌いになるわけないでしょ?」
「そうですね。天地がひっくりかえってもないです」
「ないですねぇ……」
二人に続けてそう答え、ついでに「恋愛感情もちゃんとありますよ」と心の中で付け足す。聖仁さんはもうとっくの昔から瑞祥さんに惚れている。
無粋な真似はしたくないので絶対に本人には伝えないけれど。
「でもこんな男勝りでガサツでいい加減な奴なんて……」
「仮に嫌いになってたなら、今頃とっくに離れていってると思います……!」
「でもあいつの前でオナラもゲップも容赦なくしてきたし……」
「流石にそれはないわ」
盛福ちゃんと同意見だ。流石にそれは至急直していくべきだと思う。