「うちの里に来ないか?」


異文化理解学習の一週目が無事終わり、待ちに待った土曜日。広間に集まって皆でゲームをしたりゴロゴロして過ごしていると、唐突に鬼市くんがそう言った。


「うちの里って、八瀬童子の?」

「ああ。お前らが京都に来ていることを話したら、お頭が遊びに連れて来いって」


スマホを軽く掲げた鬼市くん。

ていうか今どきの妖はスマホで連絡を取り合うんだ。


「ええやん。俺も久しぶりに顔出したいと思てたし」


寝転がっていた信乃くんが体を起こして早速賛同する。

もちろん私達も断る理由なんてないのだけれど、時計を見上げて首を捻る。


「今からだと門限に間に合わなくない?」


来光くんの指摘に私たちはうんうんと頷いた。

今はちょうど夜中の三時、門限は朝の七時だからあと四時間程度しかない。長期休暇以外の外泊は基本認められていない。


「ああ、だから里に一泊すればいい」

「え、鞍馬の神修って外泊していいの?」

「休日なら問題ない。ここに居るやつらは次期頭領が殆どだから、休みの日は里に帰って家の手伝いをしたり頭領について回って勉強してる奴がほとんどだ」


なるほど、通りで鞍馬の神修の学生の姿をあんまり見かけないわけだ。みんな実家に帰省していたんだ。