多少の文化の違いは理解していたし、それを学ぶための異文化理解学習なのは分かっているのだけれど二日目にしてもう帰りたい。

次は古典やからそんなに難しないやろ、と信乃くんが私たちを励ます。全然励ましになっていないのに気付いてほしい。


「巫寿さん」


名前を呼ばれて振り返った。飛扇先生が手招きしている。急いで駆け寄って「どうかしましたか?」と首を傾げた。


「さっき授業中で話せなかったからな。夏休みぶりだな」

「はい。お久しぶりです」

「どうだ? こっちではやっていけそうか?」


自信を持って「はい!」と言えなくて苦笑いで肩をすくめた。ははは、と楽しげに笑った飛扇先生は私の肩をバシッと叩く。


「まぁそう気負わず楽しみなさい。せっかくいつもと違う環境にいるんだ。色々経験するといい」

「ありがとうございます。そうします」

「確かご両親の実家が京都だったろ。鞍馬の神修は麓からもそんなに離れていないし、休みの日に遊びに行ったらいいさ」

「……え? 飛扇先生、今なんて────」


「ミスター飛扇!ちょっといいか?」タイミング悪く河太郎先生が話しかけてきたことで会話は終了になった。それじゃあ、と小さく手を上げた飛扇先生は呼ばれた方へ走っていった。