瑞祥さんは潤んだ瞳で私を見た。
「困惑……してんのか? ああ……そうだな。困惑してる」
アイツはちょっと口うるさい幼馴染で、なんでも話せる親友でいいライバルで。でもあの日、聖仁が死んじまうのかと思ったら怖くてたまらなくなった。ずっと傍にいたいって思った。アイツには笑っててほしい、泣かないでほしい。心の底からそう思ったんだ。
そう呟いた瑞祥さんの表情は優しく、恋する女の子の横顔だった。
「聖仁が、大事だ。何よりも大切だ。これって、好きって事なのか」
「少なくとも特別な気持ちがあるって事だと思います」
「そう、か」
うんうんと頷けば、瑞祥さんは一点を見つめたまままた固まる。固まったかと思えばみるみると目に涙を溜めて今度は膝に顔を埋めた。
「は、ちょ、瑞祥さん!?」
「どどど、どうしましたか……!?」
ううう、と声を押し殺すように泣き出した瑞祥さん。仰天したふたりがティッシュの箱を持って慌てふためく。
「聖仁に嫌われた……ッ!」
「なんで急にそこまで行き着いた!?」
あまりにも唐突な発言に盛福ちゃんがすかさず突っ込む。
「だって私、これまで散々聖仁のこと馬鹿にしたりからかったり、言葉だって荒っぽいし喧嘩っ早いし、こんなヤツ嫌になるに決まってる……ッ!!」