「────というわけで、こんな感じで両者を制圧すればいい。分かったかな?」
白砂の上に捩じ伏せられた慶賀くんと泰紀くんは返事も身動きもできないのか、「うう〜……」と苦しそうにうめき声を上げた。丁度その時授業の終わりを知らせる鐘が鳴り響き、拘束から解放された二人はげっそりした顔で戻ってきた。
河太郎先生と飛扇先生のデモンストレーションから始まった組討演習の授業は、想像の斜め上をいく激しさだった。
妖が妖力を使うところは見たことがある。でもそれは雪童子の豊楽先生がビーカーを冷やすのにちょこっと手のひらから冷気を出す程度だったり、鬼一くんが怪力できを引っこ抜く程度の非常に可愛いもの。成人した妖たちが本気で妖力を駆使してやりあうのは初めてだった。
鬼市くんたちは見慣れた光景なのか微塵も動じなかったけれど、私たちは衝撃のあまりポカンと口を開けて固まってしまった。幽世の神職はこんな喧嘩にも果敢に止めに入らなければならないのか。
「次からはもっと危険な場面を想定してどう立ち回ったらいいのか考えていこう」
これ以上危険な場面があるんですか、と聞きたいような聞きたくないような。
「では今日の授業はここまで」という先生の合図で解散になった。
その場に座り込んだ私たち。慶賀くんたち三人が大の字になって寝転がる。
「俺やっていける自信ない」「俺も」「僕、来週まで生きてるかな」「メガネは拾ってやる」「拾うなら骨拾って!?」
いつも通りのやりとりだけれど、どこか切羽詰まっている。



