ガッと教室の扉を掴んだ太い指に目がいった。昔小学校の行事で漁業体験をした際に会った漁師さんの指がこんな感じだった気がする。

ゴツゴツしていて骨太で、日に焼けた深緑色の────深緑色?


「ナイスムーンだな、子供たち! 新しいフレンドも増えることだし、今日も張り切ってスタディしていくぞ! ヒァウィゴー!」


野太い声と共に現れたのは、派手なハーフパンツに爽やかな白いポロシャツを合わせたスタイルの男性。

ただその人の肌は肌色ではなく、深い沼の底のような深緑色をしていた。唇も血色が悪く────悪いと言うより黄色だ。黄色の唇は血色が悪いと言うんだろうか。波打つウェーブヘアを後ろでひとつに束ねている。

とにかくハワイの海でサーフボードを片手に走り回ってそうな出で立ちだった。


「な、クセ強い言うたやろ」


信乃くんの言葉に皆は苦笑いで頷いた。

二年生の担任は河童の妖、水虎(すいこ)河太郎(かわたろう)先生だ。

水虎という妖は聞いたことがないけれど、河童の妖と名乗っていたので河童の一族なんだろう。妖は種族を名乗ったあと一族名も名乗るので、どういう妖なのか見当がつけやすい。